孤立渦では質量とエネルギーが単純な関係を満たしますが、境界像渦や渦対生成を含む場合には成り立たず、質量はトンネルの進行とともに増加します。

これが作用積分に決定的な影響を与え、生成率の大小を左右します。

外因的核生成の検討では、半円状の突起を伴う境界を超流が横切る幾何を考え、突起近傍での流れの増速によりエネルギー障壁が形成されることを示します。

背景流速を上げると障壁は低下し、臨界速度に至ると消失しますが、実際にはその前に量子トンネル効果で渦が核生成されます。渦の質量は突起から離れるにつれて増大するため、トンネル過程の初期では比較的容易に進行し、その後は減速するという特徴的なふるまいを示します。

内因的核生成では、境界から離れた領域に一様超流を加えると、渦・反渦ペアの自発生成が起こります。

ここで有効ポテンシャルは、対間の引力である対数ポテンシャルと外部流れによる一様な引張り力の拮抗で形成される障壁を持ちます。

渦の有効質量は対の分離とともに増大し、流速が増加するにつれて障壁が低下し、最終的には臨界速度で消失します。零温では障壁を量子トンネルで越える確率が支配的となり、生成率は閾値的に急増します。

典型的には、実験で得られるクロスオーバー速度は臨界値の一桁低い領域に現れると見積もられます。

この研究の含意は二点にまとめられます。

第一に、位置依存する渦質量を正しく組み込むことで、これまでの三次元系での理解に比べ、二次元系では渦の生成がはるかに有利になることが示されました。

これは障壁下での質量の増加が対数的に緩やかであるため、作用が相対的に小さく抑えられる幾何効果によります。

第二に、内因的核生成は零温における量子相転移として捉え直せるため、有限温でのコスタリッツ–サウレス転移との連続的な接続が期待されます。

超流速を制御しながら渦の発生数を計測する「渦カウント実験」によって、生成率の指数的性質と前因子を同定することが可能になると提案されています。