ブラウン氏はまず、コリトサウルスという別のハドロサウルスの化石頭蓋骨のCTスキャン画像を入手。

そのデータをもとに、トサカや気道(空気の通り道)を3Dプリンターで再現しました。

さらに機械式の「喉頭(声帯)」部分を組み込んで、まるでトランペットのように息を吹き込むことで、恐竜の鳴き声を模した音が響くように設計しました。

実際にこの楽器を鳴らしてみると、幽玄な低い音から、息の強さによっては力強い咆哮のようなサウンドまで、驚くほど多彩な音色が生まれます。

古生物学者たちは、ハドロサウルスのトサカが「仲間への合図」「天敵への警告」「求愛のアピール」などに使われていたと考えており、こうした再現音がその仮説に新たなリアリティを与えています。

この楽器プロジェクトは「ダイナソー・クワイア(Dinosaur Choir)」と名付けられ、世界各地の科学イベントや音楽フェスで話題に。

2015年にはオーストリアのサウンドアート・コンペで表彰され、恐竜ファンだけでなく音楽・科学の両分野から注目を集める存在となりました。

実際の楽器で「恐竜の声」を聴いてみよう!

恐竜楽器の進化はここで止まりませんでした。

2021年、ブラウン氏はカナダ・アルバータ大学のデザイン学者と協力し、より精巧な「大人のコリトサウルス頭部」の楽器レプリカを作り上げます。

最新のCTスキャンと3Dモデリング技術をフル活用し、より実物に近い形状や気道の複雑な構造を再現しました。

コロナ禍をきっかけに、「直接息を吹き込まずに音を出す」新しい発想も生まれました。

楽器には振動センサーやカメラを内蔵し、口の動きや息の振動を電気信号に変換し、それをスピーカーから恐竜頭部の内部に送ることで音が鳴る仕組みが実現。

ギターのピックアップのようなシステムで、手を触れずに恐竜の声を“演奏”できる体験型楽器へと進化したのです。

さらに「声帯ボックス」というデジタル音源装置も搭載し、恐竜の発声器官を模したさまざまなサウンドモデルを切り替え可能に。