一方、破綻・血栓を伴う複雑プラーク(AHA VI)では、すべてで強染色の散在性球菌が線維性被帽の破綻部へ浸潤し、CD68陽性マクロファージ内外に認められました。

これらはバイオフィルムからの“散逸”後に莢膜性の毒性表現型をとった菌である、という解釈が抗体特性(プランクトン型への高い反応性)と整合します。

面積定量では、免疫陽性スコア0/+/++/+++が、平均0%、1.8%、2.7%、8.7%の免疫陽性面積に相当することも示されています。

免疫活性化のレイヤーでは、破綻部において、TLR2、CD14、TLR4、NF κBが同一局所で共発現し、自然免疫の下流シグナル(MyD88依存)活性化を支持します。

さらにCD3 / CD247(CD3ζ)陽性リンパ球の集積が獲得免疫の関与も示します。

in vitroのHEK293安定発現TLR系では、グラム陽性のミティス群は濃度を問わずTLR2系(TLR1/2、TLR2/6)を主に活性化し、グラム陰性は低濃度でTLR4優位、高濃度でTLR2シフトという応答を示しました。

これら機能データは、組織で観察されたTLR2優位の発現像と呼応します。

遺伝子発現のレイヤーでは、外科標本のGWEでTLRシグナル経路(KEGG 04640)が最も強く上方制御され、エンリッチメントスコア0.721、nominal P=0.002、FDR=0.046が与えられています。

TLR2は約2.10倍、TLR4は約2.94倍の発現上昇を示し、97遺伝子中57遺伝子でトランスクリプトが有意に上昇していました。

つまり、“細菌認識の準備ができたプラーク”という分子背景のうえで、散逸した菌の局所侵入が自然免疫スイッチを押すというシナリオが、転写プログラム面からも裏づけられます。

臨床・病理相関として、剖検系列ではviridans免疫陽性スコアが冠動脈疾患死(P=0.0001)、全心筋梗塞死(P=0.002)、再発MI死(P=0.004)と強く関連し、初回急性MIでも傾向(P=0.056)が示されています。