フィンランドのタンペレ大学(Tampere Univ.)を中心とする研究チームによって行われた最新の研究で、心筋梗塞(心臓発作)の原因の一つに、口の中に普段から棲みつく細菌(常在菌)が関与している可能性が示されました。
これらの細菌が血管の内部にバイオフィルム(細菌がねばねばした集合体を作って身を守る構造)を形成して免疫や薬から隠れており、ウイルス感染などのきっかけで一気に増殖すると、強い炎症が起きてプラークの破壊が進み、血管が詰まりやすくなるというのです。
つまり「感染→免疫の活性化→細菌の潜むプラークの破綻→血栓の形成→心筋梗塞」という一本の線が見えてきたのです。
プレスリリースのタイトルも「心筋梗塞は感染症の可能性があるかもしれない(Myocardial infarction may be an infectious disease)」とかなりセンセーショナルなものになっています。
これが本当だとすれば、将来的には心臓発作を感染症のようにワクチン(予防接種)で防ぐことも可能になるかもしれません。
研究内容の詳細は2025年8月6日に『Journal of the American Heart Association(JAHA)』にて発表されました。
目次
- 細菌と心臓発作の意外なつながり
- 心筋梗塞の原因となるプラーク中に「口の細菌」が含まれていた
- ウイルス感染などのキッカケから心臓発作が起こる仕組み
- くわしい解説(専門家向け)
細菌と心臓発作の意外なつながり

私たちの心臓は、全身に血液を送り出すポンプのような大切な役割を持っています。
心筋梗塞(しんきんこうそく)とは、その心臓の筋肉(心筋)に血液が行き届かなくなり、一部の心筋が壊死(細胞が死んでしまうこと)してしまう重大な発作です。
特に、日本だけでなく世界でも、心筋梗塞は生命を奪う病気の代表的なものの一つになっています。