次に参加者たちは、実際に20分間座って考え事をしてもらい、その後、この20分間をどれほど楽しめたか評価してもらいました。

その結果、ほとんどの参加者が、実験前の予測よりも実験後の評価を高めました。

つまり人々は、自分が予測していたよりも、ぼーっと過ごす時間を楽しめていたのです。

実験は会議室でも狭いテントの中でも行われた
実験は会議室でも狭いテントの中でも行われた / Credit:波多野 文(京都大学)ら, Journal of Experimental Psychology(2022)(PDF)

またこの結果は、環境や継続時間には左右されないことも分かりました。

誰もいない広い会議室でも、暗くて狭いテントの中でも、実験の時間が3分でも20分でも、参加者たちは思考を巡らすだけの時間を「思ったより楽しい」と感じたのです。

では、「考えるだけの時間」と「スマホで情報をチェックする時間」を比較すると、楽しさにはどれほどの違いがあるのでしょうか?

「考えるだけの時間」はスマホで情報をチェックするのと同じくらい楽しい

別の実験では、「考えるだけ」のグループと「スマホでニュースをチェックする」グループに分かれました。

そして両グループとも、実験前にそれぞれの行為がどれほど楽しいか予測し、実験後に改めて7段階評価(1~7点)してもらいました。

その結果、最初の実験と同様、「考えるだけ」のグループは当初、思考を巡らすだけの時間を過小評価していましたが、実験後には「思っていたより楽しい」と考えを改めました

「考える」楽しさは、「スマホでニュースをチェックする」楽しさと同レベル
「考える」楽しさは、「スマホでニュースをチェックする」楽しさと同レベル / Credit:Canva

また実験後の評価は、両グループとも同レベルでした。

つまり、考えるだけの時間は過小評価されるものの、実際はスマホでニュースをチェックするのと同じくらいの楽しさや満足感が得られるのです。

ちなみに研究チームは、考えるだけの時間が、7段階評価で3~4点程度であることも強調しています。