これにより、患者さんはより安全に治療を受けられるようになるでしょう。

ただし、この新しい治療法を人間に応用するためには、まだまだ超えなければならない課題がいくつか残されています。

まず、安全性と効果を確実にするため、ウサギよりも大きな動物を使った試験が必要です。

これは、人間の骨とより近い条件での結果を確認するためです。

また、どの病院でも同じように安全で効果的に使えるよう、製造方法の標準化や徹底した滅菌(完全に細菌を取り除く処理)を確立する必要もあります。

研究チームも、実際に患者さんに使えるようになるには、こうした標準化・滅菌方法の確立や大きな動物での実験など、さらなる検証が必要だと指摘しています。

それでも、この新しいアイデアが現実のものになれば、複雑な形の骨折や欠損を抱える多くの患者さんが、簡単にオーダーメイドの治療を受けられる時代がやってくるでしょう。

言い換えれば、医師が特別なグルーガンのような装置を使って、まるで傷口に絵を描くように骨を作り出し、その場で治療を完成させられるかもしれないのです。

まさに骨折治療の新しい時代が始まろうとしていますが、はたしてこの画期的な技術は本当に人間の治療にも安心して使えるものなのでしょうか?

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元論文

In situ printing of biodegradable implant for healing critical-sized bone defect
https://doi.org/10.1016/j.device.2025.100873

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。