もしブラックホールに未知の奇妙な性質があれば、その振動から生まれる重力波の音色は理論の予測と大きくずれてしまうはずです。
しかし今回観測されたブラックホールのリングダウンの音色は、理論が予測していた音色とぴったり合っており、そのズレは最大でもわずか30%未満に収まりました。
これは、ブラックホールが本当に「質量とスピンだけで説明できるシンプルな天体」であるという理論予測を、今回の観測が強く裏付けていることを示しています。
今回の観測が明らかにしたことは非常に重要で、これまでの観測でははっきりと確認できなかったブラックホールに関する基本的な予言を明確に検証することができました。
これほど鮮明なデータを得たことで、ブラックホールが宇宙の中でも特にシンプルで、数学的に予言された通りの姿であることがはっきり示されたのです。
異常な天体ブラックホールが理論通りに動くのはなぜ?

今回の重力波観測は、私たちが宇宙の不思議な性質をどこまで理解しているかを試す重要な実験でもありました。
人類はこれまで数多くの理論を通じて宇宙の謎を解き明かそうとしてきましたが、それらが本当に正しいかを確かめるには、実際の観測データが欠かせません。
特にブラックホールは、その奇妙で強力な性質ゆえに、理論通りの姿をしているのか、それとも予想外の姿を見せるのかを知る上で、最も注目されてきた天体の一つです。
今回の研究でまず確認されたのが、「ホーキング博士の面積定理」という大切な理論です。
ブラックホールの表面積が合体によって増える(減らない)ということは、ブラックホールが持つエントロピーや情報も合体により増えていることを意味します。
つまり、ブラックホールも私たちがよく知る星や物質と同じように「熱的な性質」を持ち、宇宙全体の乱雑さが増える方向に進んでいる可能性を示したのです。