つまり、これらのシステムが連携して働くことで、脳の神経細胞は清潔で健康な状態を維持しています。

逆にお掃除システムがうまく働かなくなると、細胞内に老廃物がたまり、神経細胞の働きが低下してしまいます。

今回の研究では、ヒトにも近い代謝や神経機能を持つショウジョウバエを使い、高脂肪食が脳に与える影響を詳しく調べました。

一方のグループには通常のエサを、もう一方のグループには高脂肪食を7日間与えました。

その上で、記憶力テストを行い、短期記憶(学習直後から数分)、中期記憶(数十分から数時間)、長期記憶(24時間)の3つのタイプの記憶を評価しました。

その結果、高脂肪食を与えたハエでは、中期記憶と長期記憶が明らかに低下することが分かりました。

高脂肪な食品を続けて摂取すると、しばらく時間が経った後に思い出す力が落ちてしまうのです。

では、なぜ高脂肪食は中・長期の記憶力を低下させるのでしょうか。

高脂肪食で記憶力が低下するメカニズムを解明

研究チームはショウジョウバエの脳神経細胞を詳しく調べました。

まず明らかになったのは、高脂肪食を与えたハエの脳細胞ではオートファジーの活性が低下し、本来分解されるべきタンパク質が細胞内に蓄積していた、という点です。

さらに、ゴミ袋(オートファゴソーム)とゴミ処理場(リソソーム)の数自体はむしろ増えていたのに、両者が合体して中身を分解する最終処理工程がうまく進まなくなっていました。

この現象をイメージするなら、町中にゴミ袋がどんどん増えているのに、ゴミ回収車が来ずゴミ処理場まで運ばれないまま、道端にゴミ袋が積み上がっていく状態に例えられます。

このように、高脂肪食はオードファジーにおけるオートファゴソームとリソソームの融合を抑制していることが示唆されました。

その結果、細胞内にゴミがたまってしまい、神経細胞の働きが低下。結果的に、中期記憶や長期記憶が低下するのです。