なんと、指の神経を損傷している人たちには、入浴後にシワが形成されなかったのです。
このことは、指のシワの原因が角質層だけでなく、神経にもあることを示唆しています。
そして2004年のワイルダー・スミス氏の研究や、その他の研究者たちの取り組みによって、指のシワの原因には、神経系が作用していると分かりました。
泳いだ後の指のシワは血管が収縮することでできていた

私たちの体は、自律神経系の働きによって無意識に機能しています。
例えば、心臓の鼓動、まばたき、瞳孔の収縮などが該当します。
同様に、血管の拡張と収縮も、温度や飲食、薬などの効果で、無意識に生じます。
そしてこの血管の収縮は、長時間水に浸かった時にも生じることが分かっています。
まず、手や足が数分以上水に浸ると、皮膚の汗の管が開き、皮膚組織に水が流れ込みます。
この水によって組織内の塩分濃度が減少。神経系がその情報を脳に送ります。
そこで自律神経系は、その塩分濃度の減少に反応して、血管を収縮させるのです。

手足の血管が収縮するとどうなるでしょうか。
血管の体積が小さくなるため、組織全体の体積も小さくなります。
そうなると表面の皮膚が余ったり、下に引っ張られるようになったりします。
結果として、内部の水分を失ったブドウがシワシワのレーズンになるのと同じく、内部の体積が小さくなった指もシワシワになるのです。
仮に指の神経を損傷していると、情報伝達がなされないため血管が収縮することはなく、長時間お風呂に入ったり、プールで泳いだりしても指にシワはできません。
これらの点から、「どうして長時間水に浸かると指にシワが寄るのか」という疑問には、今のところ、「神経系が血管を収縮させるから」という答えが有力だと言えるでしょう。