その結果、変換能力のある腸内細菌にのみ「ビリルビンレダクターゼ(bilirubin reductase:bilR)」という酵素をコードできる遺伝子があることが分かったのです。

さらにビリルビンレダクターゼは主に、ヒトの腸内細菌叢で大きな多様性を誇る「ファーミキューテス門(Firmicutes)」に属する細菌種によって産生されることが判明しています。

追加試験では、変換能力をもたない細菌手にビリルビンレダクターゼをもたせると、ビリルビンをウロビリノーゲンに変換できるようになることも確認できました。

つまり、おしっこを黄色にする秘密を握っていたのは、腸内細菌が作り出すビリルビンレダクターゼという酵素だったのです。

ビリルビンレダクターゼの欠如が病気の原因に?

これと別にチームは、健康な成人1801人の腸内細菌叢を調べ、その99.9%がビリルビンレダクターゼの遺伝子を保有する腸内細菌を有していたことを見出しました。

ところが反対に、炎症性腸疾患(IBD)の患者1800人超と、黄疸リスクが高いことで知られる生後3カ月未満の乳児4300人を調べてみると、ビリルビンレダクターゼの保有率が明らかに低いことが分かったのです。

具体的に、IBD患者の保有率は平均68%で、生後3カ月未満の乳児の保有率は平均40%でした。

このことから、ビリルビンレダクターゼの欠如がIBDや黄疸の発症リスクを高めていることが予想できます。

以上の知見は、おしっこが黄色くなる仕組みだけでなく、黄疸やIBDの理解にも役立つ貴重な成果です。

研究主任のブラントリー・ホール(Brantley Hall)氏は「日常的な生理現象の仕組みがこれほど長い間解明されていなかったことは驚くべきことであり、私たちのチームがそれを説明できたことに興奮している」と話しました。

チームは今後、ビリルビンレダクターゼを中心とした研究を進め、黄疸やIBDの治療法を模索していきたいと考えています。