中でもTRAPPIST-1eは、太陽系の地球に最も近い条件を持つとされる惑星であることが示唆されていました。

ただし、「水がある可能性がある」ことと「実際に水がある」ことは別問題です。

液体の水を安定して保つには、大気が欠かせません。真空の宇宙空間では水はすぐに蒸発してしまうからです。

ところがTRAPPIST-1はフレアを頻発する活動的な星で、強い放射線によって惑星の大気を吹き飛ばしてしまった可能性があります。

実際、同じ系にあるTRAPPIST-1dを観測したところ、大気の痕跡はまったく見つかりませんでした。

つまり、TRAPPIST-1eが本当に「地球らしい」惑星なのかどうかは、これまで決定的にわかっていなかったのです。

ウェッブ望遠鏡がとらえた大気の手がかり

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Credit: canva

そこで登場したのが、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)です。

研究チームは、JWSTに搭載された赤外線観測装置「NIRSpec」を用い、TRAPPIST-1eが恒星の前を通過する瞬間の光を観測しました。

もし惑星に大気があるなら、恒星の光の一部が大気中のガス分子によって吸収され、スペクトル(光の波長のパターン)に特徴的な暗い線として表れます。

観測を繰り返すことで、その大気の有無や成分を探ることができます。

今回解析されたのは4回分の通過データです。

結果は「決定的」とは言えないものの、いくつかの重要な示唆を与えました。

まず、TRAPPIST-1eが形成初期に持っていた「一次大気(主に水素やヘリウム)」は、恒星からの強烈な放射線によってすでに失われている可能性が高いとされました。

これは予想通りの結果です。

次に問題となるのが「二次大気」の存在です。

地球もそうであったように、一次大気を失った後、火山活動などによって二酸化炭素や窒素といった重いガスからなる新たな大気を再形成することがあります。