紫外線(UV)照射も、漂白剤を使わない方法として一部で検討されてきましたが、こちらも生地の劣化や新たな黄色い色素ができてしまうリスクが残ります。

こうした現状を踏まえ、旭化成の研究チームは、これまで合成樹脂の黄ばみ除去に成功していた高出力の青色LEDライトを衣類の黄ばみ除去に応用できないかと考えました。

研究の目的は、漂白剤やUV照射よりも生地にやさしく、環境にも配慮した新しい黄ばみ対策を開発することでした。

本当に光だけで、汗や皮脂、食べ物由来の黄ばみが落ちるのか、その科学的根拠と実用性を明らかにするために、さまざまな実験が行われました。

まず、黄ばみの原因となるスクアレン、βカロテン、リコペンなどの成分をガラス容器に入れ、強い青色LED光(波長445nm、1.25W/cm²)を3時間照射しました。

その結果、すべてのサンプルで色が薄くなり、元の色素が無色の物質に変わっていることが確認できました。

次に、白い綿の布にスクアレンを塗りつけて加熱し、人工的な黄ばみを作成しました。

この布を、青色LEDライトで10分間照射、紫外線ライトで10分間照射、過酸化水素溶液に10分間浸すという3つの方法でそれぞれ処理し、漂白効果を比較しました。

さらに、コットンだけでなく、シルクやポリエステルといったデリケートな素材でも同様の処理を行い、また、食べ物由来のオレンジジュースやトマトジュース、加齢オレイン酸由来の黄ばみにも挑戦しました。

青色LEDの「黄ばみを消す効果」とそのメカニズム

実験の結果、青色LEDライトを使った処理が最も強力に黄ばみを除去できることが明らかになりました。

しかも、青色LEDによる処理は生地へのダメージがほとんどなく、紫外線照射や過酸化水素処理よりもはるかに効果的であることがわかりました。

シルクやポリエステルなどデリケートな素材でも生地が傷まずに効果を発揮していたのです。