寒さや乾燥といった「環境の変化」によって、動物全体が同じように影響を受けていたのです。

この時期、人間はすでに家畜を育てていましたが、まだ「自然の環境」の力のほうが強く、家畜も野生動物も同じような変化をたどっていました。

しかし、8000年間のうち、最後の1000年間で状況は大きく変化しました。

過去1000年間で家畜は大きくなり、野生動物は小さくなった

研究結果によると、約1000年前を境に、家畜と野生動物の体の大きさはまったく違う方向に進み始めたようです。

家畜は大型化し、野生動物は小型化する傾向が見られたのです。

まず家畜は、「人間がより大きな個体を選んで育てる」という工夫(選択繁殖)が強くなっていきました。

たとえば、たくさんミルクを出すウシや、大きな肉になるブタ、成長が早いニワトリなど、人間にとって「便利な特徴」を持つ動物が選ばれて、どんどん大きくなっていきました。

一方、野生動物には逆風が吹きます。

人間の人口が増えて、農地や町が広がり、森や草原はどんどん減っていきました。

暮らしのために狩猟されることも増え、とくに大きな動物ほど狙われやすくなります。

そのため、野生動物は小型化が進み、体が小さいほうが生き残りやすくなっていきました。

こうした変化は今や、地球全体に広がっており、その影響は決して無視できません。

2018年の別の研究によれば、地球上の哺乳類全体のバイオマス(生物量)のうち、家畜が62%、人間が34%、野生の哺乳類はわずか4%しかいないという驚きの数字もあります。

さらに最近は、温暖化など気候変動の影響で、海の魚や海鳥でも「どんどん小さくなる」現象が見られています。

たとえば、北極圏のニシツノメドリ(学名:Fratercula arctica)という海鳥では、えさとなる小魚が減り、ヒナが以前より小さく育つ現象が起きています。

体の大きさが小さくなると、子どもの数が減ったり、弱くなったりして、生き残りが難しくなることもあります。