認知症のごく初期には、気づかないうちに食事量が減ったり、身体を動かすことが少なくなったりして、BMIが低下するケースが少なくありません。
この現象は「逆因果(reverse causation)」と呼ばれ、今回の研究結果を解釈する上で重要なポイントとなっています。
この研究の成果は、「BMIそのもの」よりも「BMIの変化」に注目することの大切さを教えてくれます。
特に高齢期に入ってから急にBMIが下がってきた、または食が細くなってきた場合には、それが健康のサインかもしれません。
自分自身だけでなく、身近な家族や高齢の親族のBMI変化にも気を配ることで、早めに異変に気づき、必要なケアや医療につなげることができるかもしれません。
今回の研究は、高齢期の肥満と認知症リスクの関係について新しい光を当てましたが、まだ多くの謎が残っています。
たとえば、BMI減少が「意図的なダイエット」なのか「病気や老化によるもの」なのかを区別することは、この研究ではできませんでした。
また、今回の参加者はアメリカの特定の地域に住む人たちであり、他の国や文化圏でも同じ傾向が見られるかどうかは今後の課題です。
こうした課題を乗り越えることで、「肥満のパラドックス」の正体にさらに迫ることができるでしょう。
「高齢期のBMI」と「認知症リスク」の関係には、まだ解き明かされていない部分が多くあります。
しかし、今回の研究は、「太っていること自体を無理に否定する必要はなく、むしろ体重が安定していることに注意を払うことが大切」という新しい視点を示しました。
日々の健康観察や家族のケアの参考に、ぜひこの研究の知見を役立ててみてください。
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参考文献
Older obese individuals have a lower risk of dementia, but there is a big caveat
Older obese individuals have a lower risk of dementia, but there is a big caveat
https://www.psypost.org/older-obese-individuals-have-a-lower-risk-of-dementia-but-there-is-a-big-caveat/