同時に、同大統領は「朝鮮半島版シナリオは現在のロシアとの戦争の間には大きな違いがある。例えば、北朝鮮の人口は約2000万人、一方ロシアは1億4000万人を超える。ロシアからの脅威は5倍、6倍、あるいは10倍にもなる」と警告している。そのため、「韓国の経済的成功はウクライナの手本になるが、韓国モデルをそのままウクライナに適応することはできない。特に、安全保障面においては不可能だろう」と強調している。

休戦問題では2023年7月段階でゼレンスキー大統領自身が懐疑的だった。曰く「「ロシア軍が占領した東部地域だけではなく、ロシアが併合したクリミア半島を解放するまではプーチン大統領と如何なる停戦交渉にも応じない」と主張し、「われわれはミンスク合意の過ちを繰り返さない」と繰り返し述べていたからだ(「ミンスク合意」とは、ロシアとウクライナが2015年2月、調停役のドイツとフランスの2国を交え、ウクライナ東部の紛争の包括的停戦内容)。

戦争3年半後の現在、ウクライナ側に休戦に応じる姿勢が出てきた。ゼレンスキー氏はウクライナの「安全の保証」が得られるならば、ロシア側と領土問題を話し合って休戦に応じる姿勢を見せている。一方、ロシアのプーチン大統領は現時点では軍事攻勢を停止して、キーウ側と休戦に応じる考えはない。その意味で、「朝鮮モデル型」休戦は依然、非現実的かもしれない。

米国の著名な歴史学者でロシア専門家のスティーブン・コトキン教授は雑誌ニューヨーカーとのインタビューの中で、「対ロシア制裁は今日まで有効に機能せず、クレムリン宮殿クーデターは発生していない。一方、ゼレンスキー氏の戦争終結へのビジョン、奪われた領土の回復、戦争犯罪の調査、賠償金の支払いなどは希望的観測に過ぎない。ドニエプル川沿いの国をさらに荒廃させ、居住不能にするだけだ。戦争の終結は、ウクライナが領土の一部を失う事を甘受する代わりに、EUに加盟することだ。過去の実例として朝鮮戦争の解決策がある。そのためには非武装地帯の設置と休戦が必要となる」と主張している。