筆者は子どもが生まれた後、脱サラして地方移住をした。家はとにかく広く、家の中で短距離走ができ、庭に池を作ったりサッカーやドッジボールができるほど広い家に住むことができた。筆者の周囲には同じくらい広い家に住んでいる人はいくらでもいるのだが、同じ生活を東京圏で実現できる人はほぼいないだろう。そのくらい地方は圧倒的に家が広く、しかも安い。

2つ目は時間価値だ。通勤時間は「隠れたコスト」である。手取り時給に通勤時間を掛け算すれば、年間数十万円規模の実質コストになる。満員電車のストレスや睡眠不足も加味すれば、その負担はさらに重い。あまりに遠距離通勤になるなら、東京オフィスへの通勤は合理的でなくなる。

3つ目は居住環境だ。山手線内側の便利さは魅力的だが、ワンルーム6畳で月10万円超という現実がある。広さ、日当たり、静けさなどを犠牲にしてまで都心に住む意味があるかを見極めなければならない。

そして最後は仕事内容だ。メディア、スタートアップ、クリエイティブ業界など、東京ならではの仕事であれば東京で働く合理性は担保できる。問題はそうではない付加価値の高くない仕事だ。

たとえば派遣スタッフで単純な事務作業であれば、生活費と多少高い程度の時給は割に合わない。その場合、名古屋や博多など地方の都心で働く方が合理的になる。実家から通える人ならなおさら東京で働くと経済的マイナスは大きくなる。

東京の収入で地方暮らしが最適解

これらの要素を考慮すると、最も合理的に思えるのは「東京の収入で地方に暮らす」である。

手前味噌のようで恐縮だが、筆者はそれを実践している。現在は田舎に住んでいるのだが、仕事は東京にオフィスや本社のあるものばかりだ。講演やテレビ番組への出演、インタビューなど出張を伴う場合も、東京に行くことがほとんどである。

この場合、もちろん収入や専門性など仕事内容は東京プレミアムが乗せられたものとなるが、物理的な場所は地方にいるので経済的合理性の差は最大化される。昨今は地方でもインフレが進行しているが、特に住居については地方は圧倒的に安い。