ただし、p(ピー)、t(ティー)、k(ケイ)など無声破裂音(空気を一度止めて破裂するように出す音)を含む鋭い響きの名前が常に不利というわけではなく、「外向性(Extraversion)」を重視などの条件にした場合は、こちらが有利になる状況も観察されたという。

ただ採用という場面では「誠実さ」「協調性」が重視されることは多いと考えられるので、経歴、年齢、志望動機などで拮抗していた場合、書類選考に名前が影響する可能性は意外と高いのかもしれません。

今回の研究はカナダやアメリカなど欧米の名前を対象としていますが、「音象徴」は日本語の名前でも見られる現象です。

たとえば、日本でも「たけし」や「けんじ」のようにカ行が入る名前には“元気”や“男らしさ”のイメージがあり、「さゆり」や「みなみ」といった柔らかい響きの名前には“優しさ”や“穏やかさ”を感じる人が多いのではないでしょうか。

つまり、今回明らかになった“音のバイアス”は、文化や言語が違っても、日本人にも思い当たる点がある現象なのです。

こうした名前のバイアスは、誰かを差別しようという意図がなくても、無意識のうちに働いているという点が問題でしょう。

研究チームも「公正な採用のためには、できるだけ書類選考の段階で名前を隠す“匿名選考”を取り入れることが望ましい」と提案しています。

とはいえこうした無意識に感じる印象のバイアスは、顔や声、話し方といった情報にも影響されることが示されているので、採用プロセス全体を単純に匿名化すればよい、という問題でもないでしょう。

こうした問題を取り払い、完全に公正な選考を実現しようというのはあまり現実的ではありません。

そもそも名前は、親がこうした子に育って欲しいという願いを込めてつけるものなので、必ずしも名前の印象をネガティブな意味で捉える必要はないでしょう。

ただ状況によって、名前の印象が他人の評価に影響するという事実は理解しておくことが重要です。