ヒューマンエラー削減への独自アプローチ

 自転車事故の多くが運転者の不注意や危険予測不足に起因することを踏まえ、wakabarは独特のアプローチでヒューマンエラー削減に取り組んでいる。

「システムは危険な運転をしていたら警告音を鳴らす仕組みと、帰宅後に警告された理由を学習するという二段構えで対応している。今の社会では事故があると車が悪いという風潮だが、自転車に乗る人もより安全意識を持って乗るべきだ。最終的な事故削減には自転車に乗る人たちの意識改革が不可欠」と、杉山氏は問題意識を語る。

 特に基本的な交通ルールの徹底に重点を置いている。「自転車に乗る際に左側通行・右側通行といった本当に基礎的なところを理解するだけで、事故が半分以上減っていく。ヘルメットだけでは、結局事故があった際の抑止にしかならない。根本的に事故をなくすためには、自転車の乗り方意識を変えるためのアプローチが必要。また、来年の青切符に備えてルールもしっかり分かってもらう」と説明する。

 事故データの収集・分析については、警察の公開データ、自治体との実証実験で得られる地域 のヒヤリマップ、法的規制エリアの情報を総合的に活用している。「これらのデータは製品開発と啓発活動の 両方に活かしている」と実用性を強調する。

自治体・警察との連携で実証実験を推進

自転車事故の根本解決に挑む…スマートフォンGPS技術と段階的成長戦略の画像2
(画像=『Business Journal』より引用)

 wakabarの社会実装に向けて、行政機関との連携が重要な役割を果たしている。

「正式に連携していたのは滋賀県守山市で、実証実験の募集で採択をいただいた。また公表は できないが、大阪の自治体や保険会社、警察とも何度も意見交換を重ね、連携を強化している」と杉山氏は関係 構築の進捗を報告する。

 一方で、株式会社として収益性も追求しなければならない現実もある。「自転車というだけでVCの反応率が圧倒的に悪くなるのは承知している。市場としてはまだ小さい部分だが、最終的には全国の皆さんが一人1台持つ自転車に500円の付加価値がつけば大きな市場が生まれる。意識改革することが市場改革につながる一歩だと信じている」と市場創出への確信を示す。