背景に人手不足対応
不動産会社は大手から零細までさまざまだ。個人経営の場合、客との面談中にコンタクトがあっても気が付かず、すぐに対応することはできない。大手でも休日のコンタクトには対応が遅れてしまう場合がある。リリースから1年が経ったが、現在では約100社が楽トスを利用しており、上場企業の顧客もいるという。
「不動産業界は人手不足という課題を抱えているうえに、離職率が高い業界です。そして社員は営業から契約まで一気通貫で行うのが一般的です。経営陣から見た場合、新入社員には電話対応から契約締結まで教えなければなりません。しかし、共通した教育機関がなく、大学の不動産学部も国内では7校しかないのが現状です。せっかく社員を育てても離職すると無駄になります。反響に対する初期対応や見込み客への追客対応だけでも外部に任せられれば全体の業務は楽になる。ニーズがあるのではと考え、楽トスの開発に至りました」(同)
楽トスを端的に表現すれば「インサイドセールスのアウトソーシング」であると林氏は言う。インサイドセールスとは、電話やメールなど、会社の室内にいながら行う営業活動のことだ。楽トスに任せることで、不動産会社は対面での商談に専念できるようになる。
AIをつかって「追客」を行う
楽トスでは初期対応だけでなく、売買検討者に対して定期的に追客も行う。過去にコンタクトがあった購入検討者には普段から物件情報のメールを送信し、売却検討者に対しては相場情報をメールで送り続ける。その後、タイミングを計って電話をかけ、購入・販売の検討状況をヒアリングする。
「メールは物件情報や相場情報を自動で送るシステムを構築しています。電話に関しては、頻繁にかけてしまうと客は嫌がってしまいます。そのためタイミングを見極めることが重要です。メールには顧客専用のリンクが貼られているため、リンクを踏んだ回数・タイミングなどを元にAIで検討者の売買意欲を計測し、高まったところで我々から電話をかけます」(同)
売却検討者に送られるリンクは、検討者専用の物件査定サイトとなっている。AIをもとにその場で売却金額を予想できる。
「楽トスの導入によって不動産会社は歩留まり率が向上します。例えば、コンタクトに対してアポイント取得率が10%程度しかなかった会社が、楽トスを利用したことで30%まで向上したという事例もあります。不動産業界はそもそもアポ率が低いので、画期的といえます」(同)