つまり、DCDの極端な運動の苦手さは、筋力や練習量の問題だけでなく、「目・体・脳で感じる情報がバラバラに伝わってしまい、“今の自分の体”を正しくイメージすること自体がとても難しい」という脳の不思議な仕組みが関連しているのです。

このDCDは、学齢期の子どもの約5〜6%に見られるとされていますが、診断基準に満たない軽度の傾向を持つ人はもっと存在すると予想されています。これを聞いてなんとなくADHD傾向などと似たイメージを持つ人も多いかもしれません。

実際、DCD傾向のある人は高い確率でADHD(注意欠如・多動症)も併存していることが分かっています。

世界的な調査では、DCDとADHDがおよそ半数のケースで同時に見られることが報告されており、これは「不器用さ」や「運動の苦手さ」が脳と体のコミュニケーションの仕組みから生じていることを示しています。

「努力してもなぜ上手くいかないのか?」という疑問を抱いている人は多いでしょう。しかしその背景には、脳と体の感覚統合の“個人差”があるようです。

大切なのは、「苦手さ」にもちゃんと理由があると知り、無理に周囲と同じペースを求めるのではなく、一人ひとりの特性に合った学び方や工夫を見つけていくことです。

こうした問題の理解が進まないこと、対処できていないことも不登校児童が増えている一因かもしれません。

できない自分を否定するのではなく、自分のペースで、少しずつ「できる」を増やしていく――この姿勢こそが、苦手意識を乗り越え、運動の楽しさを再発見する力になるはずです。

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参考文献

Developmental Coordination Disorder (Dyspraxia)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK603724
Brain activation associated with motor skill practice in children with developmental coordination disorder: an fMRI study
https://doi.org/10.1016/j.ijdevneu.2010.12.002