ボブ・ヴィラン問題についてのBBCの対応を見ると、問題視されたのは「放送したこと」でした。でも、この点に終始するだけでいいのでしょうか。

BBCはニュース報道を行うと同時に、クリエイティブなコンテンツを作って、これを放送・配信するメディアでもあります。

創造性や表現の自由が基本となるメディアとして、ボブ・ヴィランの発言をどう考えるのかという疑問が出てきます。BBCがこの点についてはどう思っているのかが、見えてきません。

また、音楽祭はBBCの主催ではなかったので、ボブ・ヴィランの出演自体には責任がありませんし、様々なアーティストが出ますので、多様な見方・パフォーマンスがあるでしょう。ヘイトスピーチがあるかもしれないようなアーティストの場合、そのまま生放送するのではなく、少し時間を遅らせて放送することを考えてもよかったように思います。ヘイトスピーチや問題発言を極力排除したければ、です。

そして、「生放送でヘイトスピーチかもしれないパフォーマンスがあった」としても、表現の自由の観点から「腹をくくる」、つまり、「リスクがあるかもしれないが、それを覚悟で生放送したのだ」と堂々と主張してもよかったのではないでしょうか。

キーワード:ボブ・ヴィラン

2017年に結成されたパンク・ラップ・デュオ。階級闘争、性差別、人種差別、警察の残虐行為などをテーマとする。ボーカルとギターを担当するボビー・ヴィランの本名はパスカル・ロビンソン=フォスターで、詩人でもある34歳。10代から活動開始。2000年以降、デュオはこれまでに4枚のアルバムをリリース。

※「英国ニュースダイジェスト」の筆者コラムに補足しました。

編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2025年9月3日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。