たとえば友人との会話でも、AIに話すような丁寧で当たり障りのないフレーズばかりが出てくるようになったら――それは「あなたらしい話し方」が薄れているサインかもしれません。

研究チームは提供されたプレスリリースの中で、「長期的に見ると人間がAIの話し方を無意識に真似ることで、個人の創造性や表現の個性が徐々に失われる可能性がある」と懸念を示しています。

会話とは単に情報を伝える手段ではなく、お互いの言葉のキャッチボールの中で意味や社会的なアイデンティティを共同創造していく営みです。

もし会話から創造性が失われ、みなが同じようなことしか言わなくなってしまったら、それは人間らしさの喪失に繋がりかねません。

もっとも今回の研究は、人間の会話とAI生成の会話を比較した観察研究であり、これだけで「AIのせいで人間の創造性が失われる」と断定することはできません。

しかし、AIがもたらしうる影響を事前に知っておくことで、私たちは意識的に自分らしい表現を大事にし続けることができるでしょう。

便利なAI時代だからこそ、「決まり文句」に埋もれない豊かな会話を守る努力が求められているのです。

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元論文

AI, be less ‘stereotypical’: ChatGPT’s speech is conventional but never unique
http://dx.doi.org/10.1515/ip-2025-2003

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部