この仕組みにより、Messor ibericusの女王は「自分の巣の中だけで、M. structorオスのクローンを維持し続ける」ことが可能となり、周囲に別種のコロニーがいなくても、雑種の働きアリを安定して生み続けることができます。

この「異種のオスを自ら生み、雑種を作る」という現象は、これまで動物界では報告されたことがありませんでした。

研究チームはこの現象を「xenoparity(異種産生)」と名付けています。

ちなみに、この方法で作り出された別種のクローンオスは、野生のM. structorオスに比べて形態が異なり(スリムで毛が少ない)、遺伝的多様性も低くなっており、家畜化にみられる特徴とよく似た傾向を示しています。

今回の発見は、一部の科学者を困惑させています。

「そもそも種とは何か」という概念すら揺るがしかねないものなのです。

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参考文献

Ant Queen Breaks the Rules of Biology by Producing Male Offspring That Are a Different Species
https://www.zmescience.com/science/news-science/ant-queen-breaks-the-rules-of-biology-by-producing-male-offspring-that-are-a-different-species/

Iberian harvester ant queens are cloning different species to produce hybrid workers
https://phys.org/news/2025-09-iberian-harvester-ant-queens-cloning.html

元論文

One mother for two species via obligate cross-species cloning in ants
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09425-w