水質がこの様に特徴的な原因は、湖の南に位置する「オルドイニョ・レンガイ( Ol Doinyo Lengai)」という火山にあります。
オルドイニョ・レンガイは、カーボナタイト (火成炭酸塩岩)という炭酸ナトリウムを多分に含んだ溶岩を噴出する、地球上で唯一の火山です。
このカーボナタイトを長い年月をかけて吸収したことで、ナトロン湖の水は強アルカリ性となったのです。

また、湖水が蒸発するたびに、周囲の塩性の土壌から継続的に塩分が流入することも大きな要因です。
この火山の影響で、ナトロン湖には熱水噴出孔もあり、水温は最大で60℃に達することがあります。
これは人間なら火傷してしまう水温です。
まさに地獄のような湖ですが、さらに驚くべきは、触れた動物を石化させるという噂が立っていることです。
しかし、本当にそんなことはあり得るのでしょうか? 一体ナトロン湖に触れた動物は、どのように「石化」するというのでしょうか?
動物が「石化」する噂の真相
世界的にナトロン湖が石化する湖として有名になったのは、動物写真家のニック・ブラント氏の報告がきっかけです。
ブランと氏は2011年、東アフリカの失われつつある野生動物をテーマにした写真集『Across the Ravaged Land』(2013年出版)の撮影でナトロン湖を訪れた際、驚愕の光景を目にしました。
ナトロン湖のほとりに、生きたまま石になったかのような動物たちの遺骸が散見されたのです。
その時のことをブラント氏は、こう述べています。
「初めてその光景を見たとき、私は完全に圧倒されました。そしてすぐに、『まるで生きているかのような動物たちの姿をカメラに収めたい』というアイデアが浮かんだのです」
ブラント氏は、地元の人たちと協力し、約3週間かけて最も状態のよい標本を集めました。