すると警報が鳴った場所(つまり刺された場所)に「好中球」と呼ばれる免疫細胞が真っ先に集まってきます。
好中球は、体内に侵入した細菌や異物を攻撃する役割を持つ、いわば免疫の「最前線の兵士」です。
ところが、今回の研究では、この好中球が集まると、「単球」や「マクロファージ」と呼ばれる別の免疫細胞を呼び寄せることが分かりました。
単球やマクロファージは本来、侵入した異物を食べて処理する掃除屋のような役割を持っていますが、皮肉なことに、フラビウイルスにとっては「感染しやすく増殖しやすい細胞」でもあるのです。
つまり、好中球が呼び寄せたこれらの細胞がウイルスの「格好の標的」となり、ウイルスが体内で増えるのを手助けしてしまう結果となります。
研究チームはさらに、このTLR2がどれだけ重要かを証明するために、別の実験を行いました。
マウスの感染部位でTLR2の働きを一時的に抑える薬を使ってみると、蚊の唾液による感染促進効果が明らかに弱まりました。
また同時に、ウイルスの病原性(病気を起こす力)も大きく低下することが示されたのです。
これはつまり、TLR2の働きをブロックすることで、「蚊の唾液がウイルスの感染力を増強する」ことを防げる可能性を意味しています。
これら一連の実験結果から、蚊の唾液に含まれる「TLR2刺激物質」は、フラビウイルス感染症を悪化させる重要な原因のひとつである可能性が強く示されました。
まとめると、「蚊の唾液がTLR2を刺激する」→「好中球が集まり免疫反応を起こす」→「単球やマクロファージがさらに集まりウイルスの増殖を助ける」という免疫の連鎖反応が、蚊を通じて起きるウイルス感染症の重症化を引き起こしていると考えられます。
蚊はただの運び屋ではなくブースターだった
