しかし、現実にはその浮いたコスト分は、増大する開発費や広告費の補填、あるいは株主利益に還元される形で吸収されています。
つまり、プレイヤーの期待と企業の論理に深いギャップがあるのです。
そしてそのギャップを埋める術を見つけられないまま、業界は高価格化と不信感の連鎖へと突入しています。
この構造は、ゲーム業界に限らず、映画、音楽、書籍といった他のメディア業界でも共通しています。
しかし特にゲームの場合は開発サイクルが長く、投資額が大きいため、価格改定の影響が極めて直接的に表れるのです。
では、解決策はあるのでしょうか?
専門家の一部は、インディーゲームや中小規模の制作スタジオによる「ミドルタイトル」への回帰が鍵になると語っています。
小規模でもクオリティの高い作品が成功する例(『Stardew Valley』『Balatro』など)は増えており、多様性と柔軟性のあるゲーム市場の構築が、今後の価格安定につながる可能性もあるのです。
De Schutter教授は、次のように述べています。
「ゲーム業界は“すべてが超リアルなグラフィックである必要はない”という姿勢に立ち返り、『このグラフィックで十分』と納得することが必要になってくるでしょう」
これからのゲーム業界には、グラフィックの精密さだけではなく、「体験としての満足度」や「制作の持続可能性」に対する新たな価値基準が求められているのかもしれません。
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参考文献
Why are video games getting more expensive? Spoiler: It’s not just tariffs
https://news.northeastern.edu/2025/08/29/why-are-video-games-so-expensive/
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。