かつて標準だった60ドルと比較して約33%の値上がりに相当し、多くのファンに衝撃を与えました。

De Schutter教授は、「今のAAAゲームは開発チームの力を限界まで引き出して、できる限りリアルで没入感のある体験を作り上げようとしている」と述べています。

このような状況では、“差別化”が命題となり、より多くの資金が投入されるようになります。

膨張した開発費を回収するために、本数を売るだけでなく、ゲーム内課金などの追加的な収益モデルも不可欠になっているのです。

さらに、COVID-19パンデミック中に起きたゲーム業界への一時的な投資ブームが落ち着いたことも重要な要因です。

パンデミック中、多くの人々が自宅での娯楽としてゲームに目を向け、大きな資金が業界に流れ込みました。

しかし、実際の収益成長は期待ほどではなく、その反動で投資家が慎重になり、資金の流入が鈍化しました。

De Schutter教授は、「このままでは持続可能ではない」と警鐘を鳴らしています。

デジタル販売化と消費者心理のズレがもたらす「価格への違和感」

ゲーム価格が上昇していく中、消費者側の心理も大きく変化してきました。

近年、ゲーム販売はデジタル中心へと移行しつつあります。

プレイヤーはダウンロード購入を前提とし、パッケージを手に取ることは少なくなりました。

このデジタル化により、ユーザーの間で「ゲームはもっと安く買えるものだ」という意識が広がりつつあります。

Epic GamesやBlizzard Entertainmentに勤務経験のあるゲームプロデューサー、Ryan Maloney氏は、「オンラインでのセール文化が浸透した結果、消費者はフルプライス(定価)に対して敏感になっている」と指摘します。

かつては60ドルでも納得されていた価格が、今では「高すぎる」と感じられてしまうのです。

しかも、デジタル販売ではパッケージ・流通・小売などのコストが削減されているため、「だったら安くなるべきでは?」という疑問や不満が噴出するのも無理はありません。