研究者たちによれば、「読むこと」は外部情報の“入力”であり、「書くこと」はそれを再構成する“出力”です。
これらの行動は、脳の言語ネットワークを活性化させるとともに、記憶・想像・推論といった複数の認知プロセスを連動させる働きがあります。
つまり、「読む」「書く」という行為は単なる学習手段ではなく、脳の中で知識を“構造化”するための重要な手段なのです。
だからこそ、大学生の「読む」「書く」の習慣が、読解力に大きな影響を及ぼしていたのです。
ちなみに調査では、「紙の使用率」と「記録スタイル」の関係にも注目が集まりました。
基本的にはどちらのスタイルでも内容を要約して記録する人が最多でした。
しかし、その中でも講義記録で紙を100%使用している学生は、内容を詳細に記録する傾向が強く、逆に電子機器を多く使う学生は印象に残った部分だけを記録する“最低限スタイル”にとどまる傾向がありました。
こうした傾向からも、深い理解や丁寧な情報処理の違いが生じている可能性があります。
この研究は、教育方法の見直しを迫るだけでなく、「読む・書く」という人類の根源的な行動が、現代の学習においても依然として決定的に重要であることを、脳科学的観点から再確認させてくれるものでした。
読むことと書くこと。
それは単なる学習行動ではなく、知性を育てる“脳の営み”なのです。
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参考文献
【研究成果】デジタル時代の学生に対し読み書きの実態を調査 ~「書く」ことと「読む」ことの累積効果が明らかに~
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/20250901140000.html
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。