しかし、現在までのところ「慢性副鼻腔炎に対する抗菌薬の定期的な長期使用は推奨できない」というのが研究チームの結論です。

このメッセージは、抗菌薬の乱用による耐性菌(薬が効かない菌)の増加を防ぐ観点からも重要でしょう。

意味のない抗生物質使用を減らせれば、患者さん自身も余計な薬の副作用リスクから解放されますし、社会全体としても耐性菌対策につながります。

では今後の慢性副鼻腔炎治療はどう変わるのでしょうか。

研究者たちは、「ステロイド点鼻薬や鼻洗浄など保存的治療で十分な改善が得られない場合、遠慮なく外科的治療(内視鏡手術)を検討すべきだ」と提言しています。

患者さんやプライマリケアのかかりつけ医も、この結果を受けて「手術という選択肢にもっと自信を持ってよい」と背中を押されるかもしれません。

実際、手術を受けた患者の多くが劇的な症状改善を経験しており、「長年、頭に雲がかかったような不快な日々を送っていたが、手術によってようやく晴れ間が見えた」といった喜びの声も報告されています。

こうした声は、同じ病に苦しむ世界中の人々に希望を与えるでしょう。

効果の乏しい治療に貴重な時間と費用を費やすのではなく、早期に有効な手術に踏み切ることで、患者さんの通院回数や無駄な投薬を減らし、結果的に医療費の節約にもつながる可能性があります。

研究チームも「治療までの時間短縮や不要な受診・投薬の削減に役立てたい」と述べており、現在手術の費用対効果(コストパフォーマンス)についての解析や、手術効果がどれくらい長持ちするかを見る長期フォローアップ研究を進めているところです。

最後に、今回のMACRO試験はイギリス国内の成人患者を対象としたものですが、今回の成果が慢性副鼻腔炎の治療方針やガイドラインを大きく見直し、新たな標準治療の確立につながる可能性が高いでしょう。

日本においても、このエビデンスは大いに参考になるでしょう。