これはどの治療法も非常に安全であることを示しています。

つまり、この研究結果から言えるのは、「内視鏡手術が明らかに症状を改善する効果を持っているのに対し、抗生物質の長期投与はほとんど効果がなく、リスクが低い代わりに得られる利益もほぼない」ということです。

この研究は「薬だけで治そうとする」慢性副鼻腔炎の一般的な治療法を見直すきっかけになる重要な発見と言えるでしょう。

実際の治療現場では、患者さんも医師も長期にわたる抗生物質治療に期待を持つかもしれませんが、その期待が本当に正しいのか、今回の研究はしっかりと問いかけています。

本当に効果のある治療を選ぶためには、このように科学的に証明されたデータを参考にすることが何よりも大切なのです。

蓄膿症に対しては手術を前倒しへ

蓄膿症に対しては手術を前倒しへ
蓄膿症に対しては手術を前倒しへ / Credit:Canva

この研究は、慢性副鼻腔炎に対する治療戦略に大きな一石を投じるものです。

まず注目すべきは、「エビデンス(科学的根拠)の欠如による手術効果への半信半疑」が払拭されたことです。

従来、慢性副鼻腔炎の外科手術は広く行われてはいたものの、「本当に手術に意味があるのか?薬だけでも十分ではないのか?」という疑問が専門家の間にもあり、一部の地域では手術へのアクセスが制限されていました。

しかし本試験で初めて大規模なランダム化比較試験による明確なデータが得られ、手術の有効性が裏付けられたのです。

研究を率いた英イースト・アングリア大学のフィルポット教授は、「今回の結果は、慢性副鼻腔炎に悩む世界中の患者の治療方針を変える重要な根拠になるでしょう」と述べています。

一方、長年用いられてきたマクロライド系抗菌薬の少量長期投与については、残念ながらその有用性を支持する証拠が見つからなかったことになります。

もちろん、本研究は6か月間という経過での結論であり、更に長期間では異なる結果が出る可能性や、特定の患者層では効果があるといった細かな検討は今後の課題として残ります。