もし慢性副鼻腔炎に対する抗生物質の長期投与が「実はあまり効かない」ことが分かれば、それは医療の現場にとっても、患者さんにとっても非常に大切な発見になります。
もう一つの課題は、治療法が統一されておらず医師の判断によって大きく変わってしまうことでした。
ある医師は抗生物質を長く使い続け、ある医師は早めに手術を勧めるといった違いがあり、実際に地域によって手術を行う割合が最大で5倍もの差があったという報告もあります。
こうしたバラつきがあると、患者さんはどの治療を信じたらよいのか迷ってしまいます。
だからこそ、「薬と手術のどちらが本当に良い治療なのか?」という問題に明確な答えを出すことが重要だったのです。
そこで今回、イギリスの研究チームは、この疑問を解決するための大規模な臨床試験(MACRO試験)を計画しました。
この研究の目的はとてもシンプルです。
「慢性副鼻腔炎の患者さんに対して、長期的な抗生物質治療と内視鏡手術のどちらが、症状改善や生活の質を高めるために本当に役に立つのか」を明らかにすることです。
さらに、この試験は数百人の患者を対象に行うことで、説得力のある科学的な証拠(エビデンス)を得ることを目指しました。
手術・抗生物質・プラセボを6か月比較

この研究では、慢性副鼻腔炎に対して「内視鏡手術」と「長期の抗生物質治療」のどちらが本当に効果があるのかを明らかにするために、非常に丁寧で厳密な方法が使われました。
そもそも「治療が効くかどうか」を調べるには、ただ患者さんを観察するだけでは十分ではありません。
薬や治療の効果を正確に知るためには、「ランダム化比較試験(ランダムかひかくしけん)」という特別な手法が必要なのです。
ランダム化比較試験とは、参加者をくじ引きのようにランダム(無作為)にいくつかのグループに分けて、それぞれに異なる治療を受けてもらい、その結果を比べる方法です。