「最古の印刷物」?ミノア文明の驚異的なテクノロジー

 ファイストスの円盤のもう一つの驚くべき特徴は、その製作方法にある。記号は一つ一つ手で彫られたのではなく、文字の形をしたスタンプ(印章)を、湿った粘土に押し付けて作られているのだ。

 全ての記号が均一な形をしていることから、これは間違いなく「活字」のようなものを使った技術であり、「世界最古の印刷物」と呼ばれることもある。偽造説が唱えられたこともあったが、記号を一度消して押し直した訂正の跡が見つかっていることや、年代測定の結果から、現在では本物の遺物であると結論づけられている。この一点だけでも、ミノア文明が驚くほど高度な技術を持っていたことの証左だ。

100年以上も未解読「ファイストスの円盤」の謎、古代クレタ島の“オーパーツ”が語りかけるものとは?の画像6
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謎は終わらない

 ファイストスの円盤は、未解読であるがゆえに、私たちに無限の想像の余地を与えてくれる。それはミノア文明の失われた言語を解き明かす鍵なのか、それとも私たちの知らない全く別の文明からのメッセージなのか。

 AIによる統計解析など、新たな技術を使った挑戦も続いているが、決定的な解読には至っていない。いつか、この円盤と対になる「ロゼッタストーン」のような遺物が発見され、全ての謎が解き明かされる日が来るのだろうか。

 それまで、クレタ島の博物館に眠るこの小さな円盤は、古代からの謎めいた微笑みをたたえながら、人類の知的好奇心を永遠に刺激し続けることだろう。

参考:WikipediaPhaistos Disc、ほか

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