すると、陰謀論を評価しているときにだけ、2つのグループで脳の活動している場所がまったく違うことがわかったのです。

この対照的な現象は専門用語で「二重解離」と呼ばれることもありますが、簡単に言えば「陰謀論に触れたときだけ脳の使い方が切り替わる」ということです。

陰謀論を信じやすいグループは、主に脳の前の方にある前頭前野の一部が活発に動いていました。

具体的には、「腹内側前頭前野(vmPFC)」と「背内側前頭前野(dmPFC)」という場所で、おでこのすぐ裏側に位置しています。

これらの領域は、「その情報が自分にとってどれくらい意味があるか」や、「本当に信じていいのか」という不確かな状態を判断するときに使われる部分です。

つまり陰謀論を信じやすい人は、陰謀論を読んだ瞬間に「自分の考えにぴったり合うか」「本当かもしれない」と迷ったり、魅力を感じたりする回路が働きやすいと考えられます。

一方、陰謀論に懐疑的なグループは、別の脳の場所を使っていました。

「海馬」と呼ばれる脳の中央付近にある部分や、「楔前部(けつぜんぶ)」という頭の内側の上の方にある領域です。

海馬は記憶の中枢として知られ、今まで自分が学んだことや経験したことを思い出して、新しい情報と照らし合わせる役割を持っています。

楔前部も、自分自身がこれまで経験したことを振り返りながら情報を吟味するときに活躍します。

陰謀論に懐疑的な人たちは、こうして自分の持つ記憶や知識を使って慎重に情報の真偽を判断していると考えられるのです。

さらに面白いことに、このような脳活動の差は陰謀論を評価しているときにだけ起きていました。

普通の事実情報を評価するときには、信じやすいグループと懐疑的なグループの脳の活動には明確な違いがありませんでした。

つまり、陰謀論を信じる人は普段から情報を適当に判断しているわけではなく、「陰謀論という特殊な情報にだけ」脳の判断の仕方が変わってしまうという特別なバイアス(偏り)を持っている可能性が示されたのです。

だから何が変わる?反証が効きにくい訳

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