質問はとてもシンプルなもので、例えば「政府は重大な秘密を隠していると思う」や「世の中で起きることには裏で誰かの陰謀がある」といった陰謀論の典型的な主張に対して、どれくらい同意するかを7段階で答えてもらいました。
そしてその回答から、「陰謀論をどれくらい信じやすいか」という数値を計算したのです。
このアンケートの結果を元に、陰謀論を特に強く信じている上位10%の人と、陰謀論に対して特に懐疑的な下位10%の人を選び、2つのグループを作りました。
次に研究者たちは、これら2つのグループに対して、「脳のどの部分を使って陰謀論や事実の情報を評価しているか」を調べるための実験を行いました。
ここで使ったのがMRIという機械で、これは脳の活動をリアルタイムで詳しく調べることができる特殊な装置です。
MRIを使うと、脳が働いている部分に多く血液が流れることを利用して、どの部分が活発に働いているかを画像で見ることができるのです。
実験では、参加者に陰謀論と事実に関する2種類の情報を見てもらいました。
全部で72本の短い文章を用意し、その半分は典型的な陰謀論の内容、もう半分はそれらの陰謀論に関連した事実情報です。
例えば陰謀論としては、「地球温暖化は発展途上国を抑えるために先進国が仕組んだものだ」とか、「新型コロナウイルスは生物兵器として意図的に拡散された」あるいは「英国のダイアナ妃は計画的に殺害された」など、よく耳にする主張を使いました。
一方、事実情報はそれぞれに対応していて、「地球温暖化は観測データに基づく現象である」、「新型コロナウイルスは今のところ人工的に作られた証拠はない」、「ダイアナ妃はパリのトンネルで交通事故によって亡くなった」といった一般に広く認められた事実を提示しました。
参加者が自然な状況で判断できるように、これらの情報はSNSの投稿のような見た目にデザインされ、また10秒間の音声でも読み上げられました。