また面白いことに、一つの陰謀論を信じると、他の陰謀論まで次々と信じ込んでしまう傾向も確認されています。
しかも、それらがどんなに矛盾していても関係ありません。
「ある事件は政府が仕組んだ」と信じる人は、「同じ政府が他の事件を隠している」という全く別の陰謀論まで受け入れてしまうことがあるのです。
まるで陰謀論という眼鏡を一度かけてしまうと、世界の見え方がガラッと変わってしまうような状態です。
では、そもそもなぜ人は陰謀論に惹かれ、それを信じ込んでしまうのでしょうか?
単に勉強が足りなかったり、だまされやすい性格だから、と簡単に片付けることはできません。
陰謀論を信じる人は、どんなにきちんとした証拠を示されても、なかなかその信念を手放しません。
まるで、何か特別な粘り強さや強い魅力が陰謀論そのものに隠れているかのようです。
過去の心理学の研究から、陰謀論を信じやすい人にはいくつかの共通点があると分かっています。
たとえば、科学や政府など社会の仕組みそのものへの不信感が強かったり、偶然に起きた出来事にも「何か裏があるのではないか」と疑ってかかりやすい傾向があることが報告されています。
しかし、心理学ではその「心の傾向」は指摘できても、「脳の中で具体的に何が起きているのか」まではよく分かっていませんでした。
そこで今回の研究チームは、陰謀論を信じやすい人の脳の中で、情報をどう処理しているのかを詳しく調べることにしました。
陰謀論を信じやすい人の脳では、そうでない人とは何か異なる働きが起きているのではないか。
そんな予測を立てて、科学的な方法で調べる実験に挑んだのです。
一部の人々は陰謀論に接すると特殊な脳反応を起こす
研究チームはまず、「陰謀論を信じやすい人」と「陰謀論に懐疑的な人」をどうやって分けるかというところからスタートしました。
そこで、388人の若者を対象にオンラインでアンケート調査を行いました。