店長の仕事は、従業員が楽しく働ける環境を作ること

 同社では店長が担う最も重要なタスクというのも、他の小売企業とは異なる。

「当社は従業員にノルマを課していませんが、各店舗ごとに目標はございます。しかし、目標に届かなかったからといって、店長がその責任を追及されることはありません。店長に最も求められるのは、いかに従業員が楽しく働ける環境を作れるかということです。店長一人が奮起して2倍売っても、それは1人の売上が2倍になったにすぎません。しかし店長が従業員のやる気を引き出す環境を作ることで、その店の従業員一人一人が少しでも売り上げを伸ばすことができたら、その店の売上は大きく変わるのです」

 大手小売りチェーン関係者はいう。

「一般的に小売や飲食のチェーンでは現場にノルマを課して、それを上回れば高い報酬を払うというかたちで従業員のモチベーションを引き出すというのが一般的なので、ケーズHDの手法は珍しいといえます。企業としては一定レベルの売上と利益を継続的にあげることさえできれば、その方法に正解はないわけなので、従業員は『頑張らなくてよい』といわれながらも自発的に取り組むことで会社的に黒字を維持しているとすれば、一つの成功モデルとして参考になるのでしょう」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)