お客様の要望に対して必要ないと思われる機能は必要ないとはっきり伝える
気になるのは、「がんばらない経営」「丁寧な接客を最優先」が、どのように業績成長につながるのかという点だ。
「今や、家電製品はEコマースで購入することもできます。しかし、私たちは店舗を中心とした家電専門店です。人間が接客することでお客様に価値を提供しています。具体的には、お客様の生活シーンをよく聞いて、それに合った商品をお勧めします。その方にとって必要ないと思われる機能は必要ないとはっきりお伝えしますし、付いていたほうが良い機能があれば、お値段が上がるとしてもきちんとお勧めします。
例えば、チラシで見た目玉商品を買おうと思って来店された場合に、ただ単にその商品をお渡しするだけであれば人間でなくても事足ります。私たちが携わっている以上、便利な機能や良い機能が付いている商品を説明しないことは、逆に不親切に当たると考えています。この時に、仮にノルマがあれば従業員は無理にその商品をお勧めするでしょう。当社にはノルマはありませんから、あくまでも無理に売りつけるのではなく、お客様のお話をよく聞いた上で、お客様の生活シーンに合った高付加価値商品をお勧めする。こうすることによって、自然と客単価を上げることができ、労働生産性が上がります。
例えば洗濯機を例に取れば、4万円から30万円の商品までラインナップがあります。ご説明にかかる時間は機能が多い商品でも少ない商品でも大差はありません。仮に1時間ご説明をするとして、30万円の商品を買われる方は多くはありませんが、10人に1人しか買っていただけなかったところを、10人に2人にすれば、労働生産性は上がるわけです。
ここで一つ、ロボットクリーナーの例を挙げましょう。ロボットクリーナーは高価なものが主流でしたが、満を持して廉価版が発売されました。私はもちろん廉価版の商品がたくさん売れると想像したのですが、実際にはそうではありませんでした。結局は、より機能が付いている倍程度の値段の商品が多く売れたのです。多くの買い物は、自分の想定よりもやや高いものを買った時のほうが満足度は高くはないでしょうか。逆に値段の安さにつられて買った時は、どうせならばもう少し良いものを買えばよかったかなと後悔することはありませんか? 大型家電は一度買ったら最低でも10年程度は使うものです。私たちはお客様にがっかりした思いをさせないよう、しっかりと高付加価値商品をお勧めしていきます。
当社は、お客様に対して本当の親切を実行することを目指しています。しかし、お客様に対する親切とは画一的なものではありません。その時々、一人一人、時と場合に応じて異なるもので、マニュアル化できるものではありません。当社では、何をすべきかを自らが判断し、率先して動くことができるような従業員をOJTによって育成しています。そして、店長は従業員が楽しく活き活きと働ける環境を作ることに専念します。そうすることによって笑顔でよい接客をすることができ、そのことがお客様の満足につながり、ケーズデンキのファンを増やしています」