調査の結果、研究チームは驚くべき発見をしました。
「兄弟姉妹への攻撃性」に限ってみると、女性の方が男性よりも高いという結果が出たのです。
たとえば、子ども時代の兄弟姉妹間で「殴った」「怒鳴った」といった直接的な攻撃を行った回数は、女性の方が明らかに多い国が多数を占めていました。
特に「怒鳴る」行動は、子ども時代も大人になってからも女性の方が高い傾向が続いています。
一方、兄弟姉妹以外の友人や知人に対する攻撃性は、やはり従来通り男性の方が高いというパターンが世界各地で確認されました。
つまり、「身内相手」か「他人相手」かで、攻撃性の性差がまったく逆になっていたのです。
この意外な結果は、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米などさまざまな国や文化圏で共通して観察され、ジェンダー平等度や経済発展の度合いなどの社会的指標ともほとんど関連がないことが示されました。
ではなぜ、兄弟姉妹という身近な存在に対しては、女性がより攻撃的になりやすいのでしょうか。
その理由について、研究チームはいくつかの可能性を指摘しています。
まず、家族の中では男女ともに 「親の関心」や「家庭内のリソース」 をめぐって激しい競争が起きやすいという事情があります。
このような環境では、男の子も女の子も本気になって自分の立場を守ろうとします。
また、外の世界での攻撃は男性の方が力が強いため女性のリスクが高くなりますが、家族内でそうしたリスクを考慮する必要は少ないため、女性も遠慮せずにぶつかることができると考えられます。
加えて、親が「男の子が暴力をふるうこと」には厳しく注意する一方で、女の子のケンカにはやや寛容になる家庭も少なくありません。
こうした文化的背景は世界のどこへ行っても見られるものであるため、家族内では攻撃性のパターンが男女で逆になっている可能性があります。
進化生物学の観点からは、兄弟姉妹同士は親の愛情や物資といった限られたリソースをめぐって争う機会が多かったため、女性であっても他人との関係よりも攻撃的になる必要性があったと考えられます。