研究者たち次の実験ステップとして、ガーたちのDNA修復にかかわる遺伝子をマウスなどに組み込むことで、マウスのDNA修復効率を上げる実験を計画しています。
研究者たちは、ガーの持つ優れたDNA修復能力を医療に応用することができれば、人間にとって有益な薬を作れるだろうと述べています。
というのも、がんや老化の原因はDNAが変異することにあるからです。
もし何らかの方法で、DNAの変異を完全に抑えることができるのならば、理論上、がんも老化も起こらなくなるはずです。
(※ここで言う完全とは進化スケールにおいて、100万年あたり0個の変異という意味に加えて、個体の一生におけるDNA変異率を0%にすることを意味します。)
ただその場合、人類の進化は終焉を迎えることになるでしょう。
DNAが一切変化しない種では進化も起こらず、環境変化にも脆弱になります。
もし変化を拒絶しつつ運よく絶滅を免れることができれば、人類もいつの日か「生きている化石」になれるかもしれません。
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参考文献
Study of slowly evolving ‘living fossils’ reveals key genetic insights
https://news.yale.edu/2024/03/04/study-slowly-evolving-living-fossils-reveals-key-genetic-insights
元論文
The genomic signatures of evolutionary stasis
https://doi.org/10.1093/evolut/qpae028
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。