逆を言えば、1億500万年の時を経ても2種のガーたちの間には、人類で言えば人種程度の違いしかうまれていなかったわけです。
これまでの研究で、異なる2種間で自然交配で生殖可能な子孫を作れる最も古い例は、シダ植物であると考えられていましたが、今回の結果はそれを6000万年も上回ることになります。
この結果は、ガーたちがDNAレベルでもほとんど変化がない、ある意味で「真の生きている化石」と呼べる存在であることを示しています。
これまで生きている化石についてさまざまな研究が行われてきましたが、外見ではなく生物学的な側面で「生きている化石」に到達する方法が示されたのは、今回が最初になります。
しかしなぜガーたちの遺伝子は、時間が経過してもほとんど変化しないのでしょうか?
ガーたちは優れたDNA修復能力を持っている

なぜガーたちのDNA変異速度は遅いのか?
研究者たちが分析を行ったところ、調査されたガーたちで、ほぼ一貫して変異速度が低くなっていることが判明します。
つまりガーの変異速度の遅さは、環境などの外部的な要因ではなく、ガーたち自身が備えている内部的要因によるものとなります。
研究者たちはこの内部要因の正体が「DNA修復速度の高さ」にあると述べています。
生命には、DNAを変異させる力に抵抗してDNAを修復しようとする力が備わっていますが、ガーたちはこのバランスが修復側に大きく傾いていたのです。
(※近年の研究では、ゾウやクジラなど細胞が多い大きな動物たちが、がんになりにくいのは、高いDNA修復能力のお陰であることが示されています)
また生命のDNAには、DNA内を飛び回ってシャッフルする「ジャンプ遺伝子」が存在しており、変異の原因の1つとなっています。
しかしガーたちのDNAでは、このジャンプ遺伝子の働きも弱められており、変異が抑えられていることが示されました。