次の実験では、同じラブラドール・レトリバーたちを対象に、食間の反応を調べました。

このテストでは、イヌたちに「透明な容器に入ったソーセージ」が与えられました。

イヌたちはソーセージを見たり、匂いを嗅いだりできますが、その容器を開けてソーセージを食べることはできません。

その結果、POMC変異を持つイヌは、そうでないイヌに比べて、より長い時間、ソーセージを箱から取り出そうと奮闘すると分かりました。

研究チームは、このことが「より強い空腹感を持つことの証拠」だと述べています。

また別の実験では、フラットコーテッド・レトリバーを対象に、睡眠中(安静時)の代謝を測定しました。

その結果、POMC変異を持つイヌは、そうでないイヌに比べて消費カロリーが約25%少ないことが明らかになりました。

一部のレトリバーは太りやすい「二重苦」を抱えている

遺伝子変異を持つレトリバーは、太りやすい「二重苦」を抱えている
遺伝子変異を持つレトリバーは、太りやすい「二重苦」を抱えている / Credit:Canva

これら実験の結果は、POMC変異を持つラブラドール・レトリバーとフラットコーテッド・レトリバーが、太りやすい「二重苦」を抱えていることを示します。

彼らは、食事と食事の間により強い空腹を感じるだけでなく、消費カロリーも少ないのです。

ラファン氏は、次のように結論付けています。

「私たちは、POMC遺伝子の変異により、イヌの空腹感が増すことを発見しました。

彼らは変異のないイヌよりも食間にすぐおなかが空くため、過食する傾向があります」

しかも、「もっと食べたいだけでなく、カロリー消費が速くないため、必要なカロリーは少ない」のです。

このことから、POMC変異は、脳内の経路を変化させ、体に飢餓信号を引き起こすものだと分かります。

いわば飢餓状態だと錯覚した体が、生命を維持するために、消費エネルギーを節約し、より多くのエネルギーを取り入れようとするわけですね。

遺伝子変異を持つレトリバーの飼い主は、より愛犬の食事に気を付けなければいけない
遺伝子変異を持つレトリバーの飼い主は、より愛犬の食事に気を付けなければいけない / Credit:Eleanor Raffan(University of Cambridge)_Genetic mutation in a quarter of all Labradors hard-wires them for obesity(2024 EurekAlert)