ハリコフ国立法科大学の「法の支配と宗教研究センター」所長のドミトロ・ヴォフク氏はカトリック通信に対し、当局の行動を批判し、「ウクライナ政府はUOCが『組織的に違法行為に関与していた』ことを証明できていない。にもかかわらず、UOCは『モスクワの潜在的な第五列』として活動禁止されている」と批判した。
キーウの情報筋によると、裁判所はこれまでにUOCの聖職者31人を反逆罪、ロシアへのスパイ行為、敵対行為扇動の罪で有罪判決を下した。ゼレンスキー大統領は7月初旬、UOCのオヌフリジ首座主教のウクライナ国籍を剥奪した。剥奪の理由は、ウクライナ出身のオヌフリイ首座主教が2002年にロシア国籍を取得し、それをウクライナ当局に隠していたためだ。UOCは既に、キーウの有名なペチェールシク大修道院の一部を含むいくつかの礼拝所を接収されている。
オヌフリイ首座主教は既に8月中旬、「当局の疑惑はUOCとは一切関係がない」と表明している。同首座主教はこれまでもロシア軍からのウクライナ防衛への支持を繰り返し表明してきた。同首座主教は2022年2月24日、ウクライナ国内の信者に向けたメッセージを発表し、ロシアのウクライナ侵攻を「悲劇」とし、「ロシア民族はもともと、キーウのドニエプル川周辺に起源を持つ同じ民族だ。われわれが互いに戦争をしていることは最大の恥」と指摘、創世記に記述されている、人類最初の殺人、兄カインによる弟アベルの殺害を引き合いに出し、両国間の戦争は「兄弟戦争(フラトリサイド)だ」と述べ、大きな反響を呼んだことがある。
ウクライナには、モスクワ総主教の管理下にあるウクライナ正教会(UOC)と、明確に国民的なウクライナ正教会(OCU)の2つの正教会がある。ウクライナ正教会はソ連共産党政権時代からロシア正教会の管轄下にあったが、ペトロ・ポロシェンコ前大統領(在任2,014年~19年)の強い支持もあって、2018年12月、ウクライナ正教会がロシア正教会から離脱し、独立した。その後、ウクライナ正教会と独立正教会が統合して現在の「ウクライナ正教会」(UOC)が誕生した経緯がある。