そもそもイスラエルがイランに正面戦を挑むこと自体が自殺行為とさえ言えるほど成算のない強がりに過ぎなかったのですが、それでも実際にやってしまったのは、手に負えなくなったらいつでもアメリカが助けてくれるという思いこみがあったからでしょう。
私はそこに、イスラエル側の最大の誤算があったと思います。というのも、第二次世界大戦直後の贈収賄奨励法制定以来、延々とワイロ漬けで肥え太ってきたアメリカの軍需産業、国防族政治家、そして高級将校、高等文官たちは、いつのまにか世界最強の軍事力を喪失していたからです。
アメリカの軍事力は世界最強ではない
その兆候が顕在化したのは、アメリカの全面支援を受けてフセイン独裁下のイラクがイランに侵略戦争を仕掛けたイラン・イラク戦争(1980~88年)頃のことでした。
イスラム革命以来、アメリカの経済封鎖で孤立無援状態になったイランを、朝鮮戦争(1950~53年)以来はるかに長期にわたって経済封鎖下にあった北朝鮮が兵器や軍事技術で支援し、イランからエネルギー資源を受け取るという関係が成立しました。
イラン・イラク戦争の頃の北朝鮮製(あるいは北朝鮮から供与された技術でイランが製造した)戦車は、ちょっと乗るのが恐そうな出来栄えでしたが、お互いにほかに頼る国もなく、必死で国家として生き延びるために軍事力の向上に努めたわけです。
現在の北朝鮮は軍用航空機製造技術では一流、ミサイルの先端技術ではロシアやイランほど進んではいないけれども生産量では世界一と言われるほど成長しています。
イランが軍事力でイスラエルのみならずアメリカとも互角以上に戦える国になった背景に、今どき珍しいスターリン主義的な社会主義国で、最高権力者が血筋で決まる王朝を形成している北朝鮮の支援があったという事実には、歴史の皮肉以上のものを感じます。
イランミサイル攻撃の戦果
それはさておき、12日間戦争でのイラン側最大の戦果は、非常に無駄の少ない戦略的要衝ばかりの狙い撃ちで、イスラエル国民の日常生活に大きな支障をきたすほどの被害を与えたことでしょう。