これは「量子的な毛(りょうしてきなけ)」と呼ばれるもので、ホーキング博士をはじめとする科学者が提案しました。
特にブラックホールの表面にはとても弱いエネルギーの粒子(「ソフトな毛」)が存在していて、そこに情報が隠されているのかもしれないという考え方です。
ただし、この量子的な毛は非常に弱く、現在の技術でははっきりと観測することは困難です。
そのため科学者たちは、まず量子力学を考えず、一般相対性理論の範囲内でブラックホールが本当に「毛がない」のかを観測によって調べようと考えました。
一般相対性理論が正しいなら、ブラックホールが合体するときに発生する重力波(時空の波)も、ブラックホールの質量と自転だけで完全に決まるはずです。
逆に言えば、実際のブラックホール合体から発生する重力波を観測すれば、「毛」があるのかどうかを調べられるわけです。
近年になって「重力波望遠鏡」という新しいタイプの望遠鏡が登場し、ブラックホールの合体を実際に観測できるようになりました。
これにより、多くのブラックホール合体イベントから出る重力波を使って、「本当にブラックホールには毛がないのか?」という理論を検証する研究が活発に行われるようになったのです。
ブラックホールはツルツルか、それともフサフサか?

ブラックホールには本当に「毛」がないのでしょうか?
この不思議な疑問を解明するために、科学者たちはブラックホール同士が衝突・合体する瞬間を観察しました。
とはいっても、実際にブラックホールを目で見ることはできません。
なぜならブラックホールは、光さえも飲み込んでしまうほど強い重力を持っているからです。
そこで研究者たちは、ブラックホールの衝突で発生する「重力波(じゅうりょくは:時空のさざなみ)」という特別な波に注目しました。
重力波とは、宇宙で大きな物体が激しく動いたときに生じる「時空のさざなみ」のようなものです。