この結果は、アインシュタインが考えた一般相対性理論で予測された振動パターンとぴったり一致しており、理論と観測結果との間に矛盾は見つかりませんでした。
言い換えれば、今回調べたブラックホールに限って言うならば、余計な特徴(毛)は見つからず、本当に「質量と自転だけで説明できるシンプルなブラックホール」であることが示されたことになります。
科学者たちは、この解析を始める前には「もしかすると理論にはない『余計な特徴』が見つかるかもしれない」と期待もしていました。
しかし、今回の分析結果からは、そのような新しい物理を示す兆候は見つかりませんでした。
これはつまり、現時点の観測技術や対象となったブラックホールでは、アインシュタインの予言を超える新たな性質を発見することは難しい、ということを示しています。
この研究の特に注目すべき点は、「二つの音色を同時に捉える」という難しい観測が現行の観測装置でも可能だったことです。
本来なら、こうした複雑な振動パターンをはっきり捉えるには、さらに進化した次世代の観測計画(2030年代に予定されている高感度な望遠鏡)が必要だと考えられていました。
しかし今回は、GW190521という特別に大きく強い重力波を放った非常に珍しいブラックホール合体の観測データを使ったことで、この難しい観測を一足先に達成できたのです。
研究者たちは、現在の技術でもここまで詳細なブラックホールの振動を検出できたことに大きな驚きと喜びを感じています。
「ツルツル」か「産毛」かで物理学の未来が変る

今回の結果は、ブラックホールがまさに一般相対性理論の予言する通りの“シンプルな姿”であることを強く裏付けるものでした。
100年以上前にアインシュタインが提唱した理論は、ブラックホール同士の衝突という極限の現象でもなお正しさを発揮したのです。