1回来ると本当にファンになってくださる方が多い
特筆すべきは、リピーター率の高さである。
「1回来ると本当にファンになってくださる方が多くて、リピーターの方もいらっしゃいます。シンガポールの方などはすぐ来れるので、アジア圏の方は割と来てくださるのですが、遠い方ですとドイツの方も1年の間に2回も来てくださって、『すごく気に入った』と言ってくれています。そういう方は、人に会いに来るんですね。『今度はボーイフレンドと一緒に行くから、紹介したい』といった感じで来てくださったりします。栃木のこの雰囲気、日本の何気ない日常がすごく楽しいということで、目的地に行く前にちょっと寄ってみる、予定表に入っていないところに寄って河川敷でピクニックしたりとか、そういうちょっとしたことがすごく思い出に残るようです」
集客方法については、SNSとウェブサイトが中心となっている。
「インスタグラムと私のウェブサイトのお問い合わせにメールをくださったりしています。私の場合は栃木県佐野市の観光協会、観光推進課と一緒に活動している部分もありますので、そちらの案件をお手伝いさせていただくケースもあります。弊社のサイトは、地元の職人さんやアーティスト、自然、伝統文化などを交えて栃木県を紹介しているので、そういうものに共感してくださる方が問い合わせしてくださいますね」
今後の展開について、竹田氏は地域間連携の可能性に言及する。
「私がご案内できる地域は限られているので、地方で同じようなことをしている、例えば近隣の群馬や福島、宮城といった、あまり観光客が来なくてこれから盛り上げていきたいような場所と連携して、ルートを広げたいと考えています。『これから2週間いるんだけど、他の場所にも連れて行って』といったお話もたまにありますので、東だけでなく西に行くとか南に行くとかでも、そういう方と繋がっていければと思います」
最後に、今後の日本のインバウンド対応について竹田氏は次のように提言する。
「今は本当にオーバーツーリズムが問題になっているので、それを打開しないと互いに詰まってしまうと思います。例えば初めて日本に来られる方のなかには『絶対に京都へ行かなければならない』と思っている方もおられますが、混んでいる時に行ったら、もう2度と行きたくないと感じてしまいますよね。一方で、京都に住んでいる方も普通の生活が回らないような状態になっているので、それを打開する必要もあります。地方にはたくさん良いところがあるので協力して、インバウンドの受け入れ先を分散していかないと本当の日本の良さというのは分かってもらえないでしょう。日本が観光大国を目指すなら、これまで注目されなかった地域を紹介し、新しいユニークな旅の形を提案していくことが大切だと思います。
地方には外国人の方が満足できるような宿泊施設が少ないという課題があります。私もいろいろと視察に伺うのですが、『必ず来てもらえるなら、改修するけれども』『対応できるスタッフがいない』といったお声をよくいただきます。 ただ、実際に改修したとしても外国人のお客様が必ず増えるとは限らず、その判断は非常に難しいのが現状です。 だからこそ、最終的には“人の力”で補っていくしかないと考えています。地元の250年続いている老舗の10代目の女将さんと親しくさせていただいているのですが、彼女の旅館は小さくてゴージャスな感じはないのですが、とにかく女将さんが明るくて、言葉が通じる・通じないの問題ではなく、すぐお友達になってしまうんです。建物や立地の条件以上に、その土地ならではの文化や、地元の人々の温かさといった魅力でカバーできる部分も、かなりあるのではないでしょうか」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)