また、防衛省はスタンド・オフ防衛能力に必要な目標の探知・追尾能力獲得のためにSAR衛星のコンステレーション構築を令和7年度の宇宙関連概算要求に盛り込んでおり、IHIとICEYEのSAR衛星コンステレーションがこれに該当する可能性は高い。
日本・フィンランド間の防衛協力が進展することは好ましい一方、国家安全保障を支える偵察衛星の海外依存度が高まることにはリスクも伴う。
2004年に米国製偵察衛星の中枢部品に欠陥が見つかった際、他国の偵察衛星も同じ部品を使用していたことから重大な問題に繋がるリスクが高まった。しかし、日本が誇る情報収集衛星は独自開発であったため、この問題を避けることが出来た。
日・フィン両国間で交渉中の防衛装備品・技術移転協定も踏まえ、より綿密な二国間協議や技術開示の際の透明性確保が求められるであろう。
【参考文献】
1)「IHI、地球観測衛星コンステレーション整備事業でICEYE社と協力、DSEIで覚書を締結(5月22日)」Jディフェンスニュース、2025年5月26日。 2)Finnish Military Intelligence Review 2025. 3)マケラ(Mäkelä, J.)『秘密のパズル―冬戦争と継続戦争における諜報部と活動―』(Salaista palapeliä: Tiedustelupalvelua ja tapahtumia talvisodan ja jatkosodan vaiheilta)WSOY, 1977.
■
増永 真悟 1988(昭和63)年、福井県生まれ。2010年、関西外国語大学国際言語学部卒業。2015年、タリン大学(エストニア)修士課程修了(国際関係論専攻)。2021年、トゥルク大学(フィンランド)にて博士号(社会学)取得。博士課程では、戦間期の北欧諸国における日本陸軍の諜報活動・工作について研究。元慶應義塾大学SFC 研究所上席所員。現在、JFSS 主任研究員。 論文に「In search of new facts: interwar Japanese military intelligence activities in the Baltic states and Finland: 1918–1940」(博士論文)、「FACTS CLARIFIED?: THE INTERWAR ESTONIAN-GERMAN-JAPANESE INTELLIGENCE COOPERATION」(Acta Historica Tallinnensia、2019年)などがある。