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三菱商事グループが、千葉県銚子沖と秋田県能代・由利本荘沖で進めていた洋上風力発電事業からの撤退を調整している、というニュースが報じられた。

三菱商事、国内3海域の洋上風力撤退を表明 コスト上昇、採算取れず

2021年の第1ラウンド入札で、同社は11.99〜16.49円/kWhという極端に低い価格を提示し、国内3海域を一括落札。「日本の洋上風力の旗手」と期待されていた。

しかし、その後に直面したのは、資材や建設コストの高騰、円安と金利上昇、さらに許認可や認証手続きの遅延といった現実だった。当初の収支計画は完全に崩れ、すでに500億円規模の減損損失を計上。今後さらに「特損地獄」が拡大しかねない状況に追い込まれている。

この撤退は、一企業の経営判断にとどまらず、日本の再エネ政策全体の構造的矛盾を示している。なぜ米国や欧州で撤退が相次ぐ中、日本ではなお推進が続けられるのか。その理由を掘り下げてみよう。

米国の撤退、日本の推進

米国東海岸の洋上風力市場では、オルステッド、BP、シェルといった大手事業者がニューヨーク州やニュージャージー州の案件から相次いで撤退した。背景には資材価格の高騰、サプライチェーンの逼迫、送電網の制約、環境アセスメントの遅延、住民の強い反対などがあった。

要は「計算が合わない」と分かった瞬間、事業者は撤退を決断したのだった。契約破棄による違約金を払ってでも、赤字プロジェクトを抱えるよりはましと判断したわけだ。これは市場原理が機能しているからこそできる合理的な行動だったといえる。