今回成功したのは、あくまでラットという小さな動物での話です。
人間の脊髄はラットよりもはるかに大きく複雑な構造をしているため、そのまま同じ方法が使えるとは限りません。
実際に人間への治療を目指すには、より人間に近い動物での試験を経て、安全性や効果を十分に確かめる必要があります。
また、実際に患者さんに使うためには、その人の体に合った細胞や人工の足場を精密に作り上げる必要もあり、まだまだ多くの研究や試験が必要です。
しかし、この研究によって、「一度切れた神経を人工的なミニ臓器でつなぎ直すことが可能である」という非常に重要な一歩が示されました。
これまで困難とされてきた脊髄損傷の治療に、新しい希望をもたらす大きな前進です。
研究チームのParr博士は、「再生医療が脊髄損傷の治療に新しい時代を開きつつある。このミニ脊髄の技術をさらに発展させ、人の治療にも活かせる日を目指しています」と期待を語っています。
ラットの歩行が再び可能になったという実験結果は、将来的に多くの患者さんが再び自分の足で歩ける未来を示す、非常に大切な成果なのです。
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元論文
3D-Printed Scaffolds Promote Enhanced Spinal Organoid Formation for Use in Spinal Cord Injury
https://doi.org/10.1002/adhm.202404817
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部