話は習近平が28年に、現状を変更する強制的な圧力を台湾にかけると決断するところから始まる。選択肢を検討させた結果、習は効果が不確実で時間が掛かる経済制裁や決定的な解決は約束されるが敗北のリスクを伴う軍事侵攻よりも、台湾に向かう船舶を封鎖する措置を選ぶ。
そして習は、中国海警局と人民武装力量海上民兵を台湾周辺に配置し、「国内の法執行問題」だと主張して台湾に向かう船舶を接収し、台湾への商業輸送を止める。この封鎖措置が国際貿易と世界経済を大混乱に陥らせた結果、台湾は中国の法的主張を拒否し、抵抗を決意するというのである。
「報告書」は「封鎖」を、法的な用語としてではなく、「中国が船舶、潜水艦、航空機を用いて台湾への海上交通を遮断する全ての取り組み」として用いている。中国の教義文書で「共同封鎖作戦」が詳細に議論されていることは、中国が台湾に対して行動を起こす場合この作戦を行う可能性を示唆するという。
こうした封鎖は、中国、台湾、米国、日本だけでなく、国際貿易の混乱、特にICチップの生産制限は、地球上のすべての国に影響を及ぼす。だがこれまで、封鎖の具体的な内容や影響についてほとんど合意が得られておらず、可能性のあるシナリオに関する定量的な分析もほとんど行われて来なかった。
26通りのシナリオのうち最悪のシナリオについてのみ後述するとして、先に「報告書」の「提言:封鎖への備えと対応」について紹介すれば・・・
「報告書」は、中国の軍事行動の可能性や、中国が軍事行動を起こした場合に米国が台湾を防衛すべきかどうかについて、立場を表明しない。しかし、米国が台湾に対する曖昧戦略を維持している限り、大統領がそう決定した際、即座に行動する準備を整えておくべきである。
そこで「報告書」は、ウォーゲームの結果と洞察に基づいて意思決定者向けの提言を策定する。これらの提言は以下の3項目の目標を有している。これらは必ずしも封鎖を阻止するものではないが、外交的解決や外部介入のための時間を稼ぐ役割を果たすであろう。
台湾と米国が準備を整えており、強制できないことを中国に示すことで抑止力を強化する 緊急時における対応時間を短縮し、より効果的な対抗措置を可能にする 他の国々が台湾に屈服を迫ることを諦めさせる。なぜなら彼らは迅速な解決が通常の商業活動を再開させることを期待している